私儀(わたくしぎ)
「私に関すること」、という意味を表す。就任挨拶状などをお送りする際に、「私ごとですが」という意味を表すために書き記す言葉。
儀とは、義でありかどめ正しいこと。人偏がついて人として筋が通っていること。儀式の儀と同じ字を書く。「儀」とは、「〜に関すること」という意味を表す日本語の用法といわれる。
「儀」については、例えば「ご祝儀を頂く」という表現があります。これは他の方からお祝いを頂くことです。このように他者の行為を表す場合にも「儀」を含む言葉が使われることから「儀」自体には謙譲の意味は含まれていないはずです。
また「儀式」という言葉があります。「かどめ正しい式」ということで謙譲の意味はありません。このような儀の用法から「かどめ正しい式」、「形式的な決まり事」、「決まり事一式」、「〜に関すること」、「事」という意味を派生していると思います。
ゆえに「私儀」とは、「個人的な・こと」という意味になります。「個人的なこと」という表現が謙譲の意味を持つのは、それが本当は「個人的なこと」ではないからです。例えば代表取締役就任の挨拶状なら、大切な人事の決定を意味します。聞いた側からすればお祝いしたい情報です。そうした大事(だいじ)を「個人的なこと」として「私儀」と表そうとすることが謙譲の心だと思います。
つまり「私儀」という言葉には謙譲の意味はありません。謙譲の思いを「私儀」という言葉で表そうとしているのです。