1. コーチ

コーチ

コーチバッグの真髄は「自由な精神、反骨心、夢多き若者」の趣旨を込めて名付けられた「ローグ」だと思う。

ブランド名の「コーチ」は、スポーツにおけるコーチを連想させる。コーチは選手の技術を向上させる。過去に選手経験を有するなど、進むべき道を知るものがコーチ。未来への可能性を秘めた選手に自身の技術や経験を繋ぐ。そして進むべき道を示す。コーチの側から見れば、例えば現役選手を引退してコーチとなる。それまでに得た自身の到達水準を生かして後進の選手を前進させることができる。選手にとってのコーチとは自己の努力に方向性を与えて、成果へと導く水先案内人に映るだろう。

しかしコーチという言葉の本来の意味は「馬車」とされている。「馬車」の役割が「コーチ」の為すべきことを表すことからコーチ(=馬車)がスポーツの「コーチ」を意味するようになったのだという。それなら馬車とは何なのか。馬車は乗り物であり移動手段。目的地まで移動するための手段が馬車となる。 しかし選手から見て自動的に目的地まで乗せてもらえる馬車などは存在しない。自動的とは思わない。適切な努力が実を結ぶように手助けするのがコーチ。また馬車で運ぶことができるのは目的地の入口までに過ぎない。そこから先は自分の足で進まなければならない。つまり、自己努力を成就させるための手助けがコーチとなる。何かに向けて取り組む人に機能美で役立つバッグを提供するブランドがコーチ。

しかしコーチングにおいては、コーチの側に自己成就や夢の続きなどの雑念が混ざるとややこしい。あくまで選手を送り届ける役目を貫き、不合理な押し付けに陥ってはならない。しかしコーチの側に経験や思い入れがなければコーチはできないだろうし、結局、双方が真剣勝負の世界を共有している。

そしてコーチという言葉にコーチングの意味が含まれるとすれば、やはり野球のグローブからインスパイアされたコーチレザーの代表格の「グラブタンレザー」を用いたローグには、コーチというブランド名を冠するバッグとして所有する物語性があると感じる。スポーツのようなひたむきな取り組みとその手助けを表象しており、使い込むほどに経年の質感を楽しめる堅牢な革のバッグ。グラブタンレザーのローグはとても魅力的で目が離せない。