真偽の境界
まことであるかニセであるか。物事には明確な境界が存在しないことがある。ガスガンという銃を模した玩具がある。引き金を引くことでBB弾と呼ばれるプラスチック製の球が発射される大人向けの玩具である。鋭い発射音や反動の大きさにも魅力があり、実銃の外観が所有欲をかきたてる。ところで本来、実銃は金属製であり、ガスガンはプラスチック製である。日本においては、モデルガンの外観を金属製にすることは、実銃との区別がつき難くなるため法律で規制されている。しかしプラスチック製の銃はいかにもおもちゃであり、所有欲を満たすものではない。ところが実銃においてもスライドと呼ばれる可動構造部分などは金属製でありながら、握りやすさなどを考慮して合成樹脂のフレームグリップを採用するという新世代の実銃が開発される時代になった。グロック18CやワルサーP99といったものがそれである。そうなると全てが金属製でなければ実銃らしさがないということではなくなり、そうした実銃を模したガスガンにおいては、より実銃に近いものを手にすることができるようになったことを意味する。そこへ来てマルゼンという会社がドイツ・ワルサー社と正式契約を結び、 実銃の図面提供・メカニズムアドバイスを受けるなど完全なバックアップ体制
を得てガスガンを開発するという事例が生まれた。ドイツ・ワルサー社からは、日本市場向け製品としての認定を受けることになったとされている。つまり銃規制の厳しい日本の法律に適合した実銃が誕生したことになる。それがマルゼンのワルサーP99というガスガンである。そうした物語性が与えられると、ガスガン愛好家であれば、ワルサー社の実銃を所有できることになる。面白いことには、国によってさまざまな規制が存在する下でも、その国のルールに従って市場参入すれば良いというアプローチの事例にも見えてくる。真摯な努力を重ねることで、真偽の境界がなくなる場合があるという好事例ではないだろうか。