1. 立体視

立体視

右目の位置から見える図と、左目の位置から見える図には角度や範囲にズレが生じる。それらを脳内で同時に認識すると、見え方の重複する部分は一つのものとして合成され、左右それぞれにしか見えない部分は、付加された一側面として認識される。そうして目の前には縦、横、高さの奥行きのある像が浮かび上がることになる。このように、あるものの多面的な姿を組み合わせて理解し、そのものの実像を捉えることを立体視という。それは目で見えるものだけにいえることではない。物事、社会現象、人物評価においても、多面性を捉えて、全体像を理解することが求められている。読書を例にいえば、同じ本を何度も繰り返し読んでいくと、一度目に感じたこと、二度目に感じたこと、三度目に感じたこと…が組み合わされて、総合的で多面的な理解を生むことになる。それを百回も繰り返して、ある一線を超えると、書物から文字が浮かび上がるように脳内に取り込まれ、その活字が思想として動き始めることになる。また、自分だけの評価に頼らずに、数人で意見交換をすると、違う脳で捉えた、ものの見方考え方を知ることができる。そうするとさらに豊かな立体視が可能となる。このように立体視とは、物事をあるがままに理解する試みとなっている。