1. 人事考課の心理的偏向

人事考課の心理的偏向

人事考課とは、従業員の能力に応じて、必要な配置と適切な処遇を行うために、客観的、合理的、総合的な指標で従業員の評価を下すことをいう。その時、考課者(評価を行う立場の者)の価値観や能力が制約となり、被考課者(評価される側の者)に対する評価にぶれが生ずることが指摘されている。これを人事考課の心理的偏向という。例えば考課者が自分よりも優れた一面を持つ従業員を評価するときに、自分の地位が脅かされる不安を感じて、あえてその良い面を無視する対応を取るような場合が挙げられる。それとは反対に、素晴らしい能力を持っているとして、手放しで高い評価を下すことも起こりえる。故に人事考課に公平性を保つことは難しく、考課者たる者は、多様な自己実現の要素をもって精神的に安定していることが望ましい。もしくは全く社外で、利害関係がないものが、参考意見を述べるなどの工夫があっても良いだろう。ある特定の時期に、その運営を担う立場にあるものが、それは他者に引き継いで行く過程にあるものとして、手放していく者としての自覚を持てているかどうか。そうした精神安定性を身に付けることが、人事考課を受け持つ立場にある経営者に求められるのではないだろうか。いつまでも手放さない。会社が自己の存在証明であるということでは、恐らく何らかの弊害が生まれることになるだろう。自己実現のチャンネルの幅を拡げることはとても重要で、ワークライフバランスの価値は、そうした面にも求められるべきだろう。また、被考課者は、常に自己実現の努力を重ねることで、普通に存在することができるのかもしれない。普通であるということは、案外難しいのではないだろうか。