1. 衛霊公第十五(386)N

衛霊公第十五(386)論語ノート

子曰。可与言而不与之言。失人。不可与言而与之言。失言。知者不失人。亦不失言。

子曰く、与(とも)に言うべくして与(とも)に之を言わざれば、人を失う。与(とも)に言うべからずして、与(とも)に之を言えば、言を失う。知者は人を失わず、また言を失わず。

子曰く、言うべきことを言わなければ存在意義を失う。言うべきでないことを言えば、言行一致を損なう。知者は人格を保ち、言行一致を損なわない。

為政第二(029)では「先行。其言而後従之。(まず行え。その言は然る後に之に従う。)」とあり、言うことは行われるべきことがを示されています。「行わない言はない」という考え方が見えます。また子路第十三(329)「剛毅朴訥。近仁。(剛毅朴訥は仁に近し。)」では、できないことを巧みに述べず、むしろ口数の少ない方が仁に近いとされます。そして本章は、言うべきことを言わなければならない局面で、何も言わなければ人であることを失うということを述べていると解釈したいと思います。それは子路第十三(317)「一言而喪邦。有諸。(一言にして邦を滅ぼすものこれありや。)」に通じる論点であると考えます。