1. 郷党第十(247)N

郷党第十(247)論語ノート

厩焚。子退朝曰。傷人乎。不問馬。

厩(うまや)焚(や)けたり。子、朝(ちょう)より退いて曰く。人を傷(きずつく)るか。馬は問わず。

(孔子が不在時に)廏舎が火事にあった。孔子が勤めから戻って(第一に)言った。「人は大丈夫か。」馬のことは問わなかった。

この章は、馬が大切であるのに、馬のことは問わなかったと記録している。馬は大切だけれども、まず勤め人の安否を気遣った。我が事の財産の毀損よりも、まず勤め人の安否を気遣う姿勢が大切だという思いを表している。火事を出してしまった。誠に申し訳ない。どうして償えばよいかと気が動転している時に、何よりもまず、「人は大丈夫か。」と声を掛けてもらえたらどうだろうか。過失は償うことができる。やり直すこともできる。だからこそ、まず人を気遣うという姿勢は、その言葉だけで強い求心力をもって、周囲の人たちに受け止められる。いざというときに責任者の姿勢が言葉に表れる。99の日常があるからこそ、1の非日常への的確な対応があることを忘れてはならない。