多くの鞄にサイドポケットは備わっていないと思います。そもそもどのようなニーズからサイドポケットが存在しているのか気付かずに5年以上の歳月を費やしました。名刺入れ、メモ帳、携帯電話、スマートフォン、エチケットブラシなど、すぐに取り出したい必需品を入れるためだとしても、その存在の必然性までは意識できませんでした。
ところが私は、このサイドポケットが携帯用靴べらを入れるために存在していることを意識しました。日常的に、鞄と共にある状況で遭遇する困難な出来事のひとつが靴の脱ぎ履きです。そこで必要なのが携帯用靴べらであり、それを瞬時に取り出せる位置こそが鞄のサイドポケットでした。それは武士の刀を収める鞘のようであり、ここに携帯用靴べらを入れておけば極めて便利です。重要な市場ニーズが顕在化されずにいたことで、かぶせ蓋をもつビジネスバッグなどに採用されていた先進的なサイドポケットは、いまや多くの鞄で廃止されつつあります。
失われた時間に罪を被せることなく、未来に向かってビジネスバッグにはサイドポケットが必要であるという事実を明らかにして、改めて需要を創造したいと思います。TUMIのかぶせ蓋鞄のようなサイドポケットが改めて普及することを願っています。