複記(ふっき)
手形や小切手の金額欄の上や下などにチェックライターの下書きなどの理由から金額を数字で書き込むことで、券面に金額が複数記されることをいう。小切手を複数枚、間違いなく発行するためには、まず小切手の耳に日付、金額、渡し先などの摘要を書き、次いで小切手の券面に渡し先と金額をおぼえ書き用に記入する。そうして小切手を切取線から切り取る。そして複数枚分をチェックライターで金額欄に印字して銀行届け出印を押すという流れになる。するとおぼえ書きの金額と金額欄の金額とで、結果的に券面に複数の金額が書き込まれることになる。ところで小切手の金額欄とは、実務上は地紋による四角囲みになった場所をいうので、それ以外の場所に金額が記載されていても落書きであって複記ではない。しかし金額欄には「金額」と書かれているだけで、四角囲みも実線で区切られているわけではない。いわばシームレスに小切手券面全てが金額欄と言えなくもないので注意が必要となる。昔は手形を変造しにくいように金額を二重に書く習慣があったようで、それを指して複記(ふっき)と呼ぶのが正確な意味だと思われる。複記の金額が文字と数字で書かれていて食い違う場合は、文字を優先し、文字と文字、数字と数字で書かれていて食い違う場合には低い方の金額を優先することになっている。ゆえに漢数字(文字)で複記をすると、見かけ上は従たる側の金額を優先しなければならないようなトリックが起こりかねない。ゆえに小切手帳の最後のページに印刷されている「小切手用法」には「なお、文字による複記はしないでください」と注意書きがされている。現在では金額の食い違いによる混乱を避ける意味で複記は推奨されていない。