配偶者
日本において婚姻関係にある二人のうち片方からみた相手方をいう。
出産と育児に関しては女性の方がより多くの時間を費やす必要がある。他方で男性は働くことでその間の家計を支える役割を果たす。所得税の配偶者控除にはこの経済負担を考慮する目的がある。女性は出産育児に多くの時間を割く間も断片化した時間で家事労働を分担している。また男性が安定して勤務する上でも女性の育児と家事の役割が土台になっている。こうした相互の関係により一方が蓄積した財産は他方の協力で実現したものであり二人の財産の総和は共有財産の性格を有することになる。相続税の課税において配偶者が相続する財産を課税対象から除く仕組みの意味はこの点に見出すことができる。
女性が出産を経て勤労所得を得る仕事に復帰するために産前産後休業や出産手当金、保険料免除制度、育児休業制度などの社会保障制度が設けられている。保育制度の充実も含めてさらなる拡充が望まれる。
同様に出産を経て育児や家事に多くの時間を割かなければならない女性が短時間のパートタイム労働に就きながら夫の所得税や社会保険の扶養の範囲で働くことも両立の一形態として支援される必要がある。
女性が出産育児と勤労を両立することは社会保障制度だけではなお難しい面があり、婚姻関係にある双方が勤務する職場でその両立が受け入れられる必要がある。定年後の親から応援をうけるなどの見えない支援も多く存在している。また両立を受け入れる職場でも現場の負担を生んでおり関係部署の時間外労働で補われる場合、その担当者の配偶者の家事労働で成り立つ面もあるだろう。つまり社会的に両立度合いの異なる働き方が存在しており、短時間勤務の女性の家事労働が社会全体の両立支援に寄与している事実が認識される必要がある。
いま国民年金の第三号被保険者制度という仕組みがある。厚生年金の被保険者に扶養されている配偶者の国民年金保険料をその制度全体の被保険者と事業主負担により納付したものとみなす制度をいう。これはその配偶者が社会的な両立支援に果たしている役割に応じる意味を見出すことができるものである。
出産や育児は病気や怪我ではないためそれを保険制度で応援し、その間の年金保険料も免除する仕組みは相互扶助ということができる。その支援の享受と第三号被保険者の支援との間には著しい不平等はないものと考えることができるだろう。これを一方的になくす議論には慎重さが求められる。
このように考えてみると政府が認めている婚姻関係における配偶者とは生物的な両性が出産育児を行なうことを支援するための政策的配慮を表すと捉えることができる。婚姻は政府が干渉するものではないが支援の対象は政府が判断することになる。
憲法が規定する婚姻関係が出産や育児を前提とした生物的な両性を支援する仕組みとして考えられたものであるとすれば「両性」の意味の拡張解釈においてはその支援制度の再整理も合わせて検討されなければならないのかもしれない。